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深呼吸宣言(2008/04/27)
橘川幸夫


インターネットという文明の上に、日本型の文化を築くために

◇21世紀になって急速にインターネットは拡大し、日常生活の基本インフラになりました。インターネットは「Webブラウザー」「検索エンジン」「ブロ グ」「モブログ」「Wiki」「CGM」など、新しい技術や考え方が続々と登場し、それらが渾然一体となって新しい潮流を作るという歴史的なダイナミズム を感じさせてくれます。

◇僕はこうした流れを見ながら、ある種の高揚感とともに、ある種の欠落感を感じていました。それは西洋文明の利便性・合理性に衝撃を感じながらも、本来の 日本風土的なエートスや共同体意識などが犯されていく危機感を持った、明治の文学者たちの魂に通底しているのかも知れません。「Wiki」という集合知の 考え方は、僕たちにとっても納得しやすいコンセプトだと思いますが、「Wikiquote」のような「世界の名言辞書」みたいなものになると、「なんだ結 局、大英帝国主義時代の大英博物館から変わってないじゃないか」と思わざるを得ません。世界中の情報を集めて、それだけで満足する心性は、僕にはよく分か らない。

◇「ブログ」は日本人の、おしゃべりでおせっかいな体質にあっているのだと思います。現在、世界のブログの4割は日本人が書いていると言われています。日 常の些末な出来事を、周辺の人間にも共有してもらうことによって地域コミュニティを確立してきた、土着的な歴史感覚が生かされているのだと思います。しか し、多くのブログが、オリジナルな情報発信ではなく、「どこそこで誰がこんなことを言ってる」とか「こんな情報を入手した」といった、風説の流布拡散シス テムとしてしか機能していないのではないかと思うと、その日本的な土着性にうんざりすることもあります。

◇僕は、西洋文明が鉄砲水のように流入した明治社会に思いをはせる。その中で、西洋的な理念と日本的な情念の葛藤の中で傷つきながら、全く新しい日本型の 近代文学を生み出した文学者たちの魂に触れたい。インターネットという近代文明の最高の利器を与えられた中で、独自の「文化」を運動として開始しなければ ならないのでは、という思いがあります。

◇僕は1972年に、ロックファンのための投稿雑誌「ロッキングオン」を創刊し、78年に、全面投稿雑誌「ポンプ」を創刊し、以後一貫して「参加型メディ ア」という考え方を追求してきました。「参加型メディア」という言葉を使ったのは、僕が最初だと思うし、少なくとも70年代において明確な意図をもって 「参加型メディア」を追求していた人はいなかったはずです。そうした立場から見ると、「CGM(Consumer Generated Media )」という言葉が一般的になり、若いベンチャー経営者が、こうした言葉を明るく語っている風景に何か違和感を感じます。参加型メディアとは、システム側の 新しさではなく、一人一人の参加する側の熱意と思いがあふれた結果として、システムが成立するメディアだと思っているからです。参加型システムが先行し て、そこに「参加させられる人」を集めてくるようなメディアは本末転倒です。

◇システムに隷属するのではなく、システムの上で、一人一人の個人が躍動するような動きをはじめたい。一人一人の個人が、社会や全体性に対して「参加す る」という意志とエネルギーが集積された結果としての「参加型メディア」を考えたい。「深呼吸する言葉」は、そうした考え方の第一歩です。言葉によって世 界と向き合い、言葉によって世界を変えようとする人々の合流を歓迎します。

■深呼吸宣言0804別バージョン

ドラマで泣いて、人生充実するのか、おまえ。
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